「そんな事ないと思うよ。」

「あら、どうしてそう思えるの?」

私は、昨日パウリと飲んだ時の事を思い出した。

「だって、陛下には婚約者がいるんでしょ。」

「コンヤクシャ?」

「結婚を約束した人。やっぱりいるわよね。さすが陛下って感じ。」

するとレーナは、頭を傾げた。

「そんな人、いたかしら。奥さんになるかもしれない人はいるけど。」

「それが、婚約者でしょ。」

「でも、まだ約束していない。」

私は、キョトンとした。

「婚約者じゃないの?」

「ただ、お嫁さんになったらいいなと、皆思っているだけよ。確か皇帝陛下には、彼女はいないはずだよ。」

胸の奥で、心臓がトクンと静かに脈打つ。

「だからって、私を好きだとは……」

「だって、一人の女の為に、メニューを変えるのよ。」