何はともあれ、



「シナ、見つけてくれてありがとう」



ずっと、探してくれてありがとう。





「………見つけられなかったよ」


ぽつりと、俯いたままシナは言う。



「うたの名前も、顔も、声も。何も思い出せなかった。俺は、うたを見つけられなかったよ」



シナはそう言ったけれど、シナがずっと違和感を抱いていてくれたから、私は今、シナの傍にいられる。



「シナの願いが、私を見つけてくれたんだよ」


「………………」




私の言葉に、納得がいかないのか何か言いたげな顔をしているけれど、

しばらくしてシナは、そっと私の頬に手を伸ばした。






「本当に、ここにいるんだな」


シナの温かい手が、私の頬から熱を送っているみたい。

シナの手が触れているところだけ、やけに熱を帯びている。









「なぁ、うた。もしも、もしもさ」



ifの話が嫌いな君が、ifの話をする。






「もしも、うたが好きって言ったらどうする?」






「私もシナが好きって、思いっきり抱きつくよ」




シナがふっと、優しい笑みを浮かべる。


私はそんなシナに、思いっきり抱きついた。



シナの手が、私のからだを包み込む。














「シナ、大好き」



「俺も」





私の声にシナは頷く。



今度はちゃんと、シナに届いた。