「本日の夕食は三種キノコのチーズリゾット、オレンジソースのサラダ、コンソメスープでございます」

「あら、美味しそう」

 本日の夕食のメニューを聞いて、木綿子は喜びの声を上げた。どれも木綿子の好きなものばかりだ。

……犬飼が作る以上、木綿子の口に合わないはずがない。

 犬飼の作る食事はどれも本格的でお店で食べるものと遜色なかった。その腕前を不思議に思ってどこで覚えたのかと話を聞いてみると、一時期プロに手ほどきを受けていたのだとか。

「ん、美味しい……」

 出来立てのリゾットを口に運んだ瞬間に呟くと、給仕していた犬飼が満足げに腰を折る。

「お褒めに預かり光栄です」

 犬飼は本当に嬉しそうに笑っていた。

 木綿子に仕えることができて幸せそのものといった様子だ。

かつて仕えるべき主人を見つけられないでいた彼は、執事としてのスキルを発揮する場もなく、日々悶々としていたらしい。

(ずるいわ……)

 木綿子だって上司である犬飼をこんな風にこき使うことに抵抗がなかったわけではない。

 しかし、犬飼のこの表情を見ていると何も言えなくなってしまう。

 でも、褒めないわけにはいかない。良い仕事をした者に報いることも主人の重要な役目だからだ。