のぼせないうちに湯船から出ると、木綿子は用意されていたバスタオルで身体を拭き、ワンピース型の部屋着を身に着けた。

 木綿子好みの身体を締め付けない、ゆったりとしたシルエットの部屋着は犬飼自らが選んだものだ。木綿子が自宅で着ている安物とは違って、素材の艶感が違う。さらに言えばいくらか上品なデザインである。

 犬飼が女性向けの部屋着をどうやって手に入れたかのかを考えるのはヤボというものだ。

 木綿子のために一級品を取り揃えたいと、何もかも自らの目で厳選することを信条としている犬飼がネットショップを利用するとは考えにくい。
 
 接客をしたデパートの女性店員もさぞや困ったことだろう。

 犬飼には申し訳ないが、想像するだけでクスリと笑える。

「お嬢様、どうぞこちらへ」

 ドレスルームを出てリビングにやって来ると、犬飼は木綿子を一人がけのソファに導いた。

 立派な腕置きと背もたれのあるビロードのソファに、身体を埋めるオットマンに足を置く。犬飼はすかさずドライヤーとブラシを両手に持ち、木綿子の髪を丁寧に乾かしていく。

 犬飼のブラッシングのおかげで、あっちこっちに膨張しがちな木綿子の髪もこの頃はとんと素直になった。

 犬飼はあっという間に木綿子の髪を乾かし終え、寝るときに邪魔にならないように髪を緩い三つ編みにして右の鎖骨に垂らした。