日常(仮)

放課後になって、隼人と一緒にマネージャーさんが迎えに来てくれるのを待ってた。
本当は前みたく一緒に施設に帰りたかったけど、今の状況で2人で歩いてるのは良くない。

「今日びっくりしたよ。来るなら教えてよ。」

「ごめん」と言いながらも笑う隼人。

「今日いた友達さ、SNSで俺のこと悪く言う人に対抗してんのかってくらい良いところたくさん投稿してくれてたんだよね。」

「私も今日助けてもらった。」

「まじ?良い奴らだろ。」

「うん。」

「SNSとか見ないようにしてたんだけどさ、マネージャーがあいつらのところだけ見せてくれて、めちゃくちゃ嬉しくてさ。」

本当に嬉しそうに話す隼人。

「本当はあいつらも攻撃の対象になっちゃうかもしれないから、気持ちだけ受け取るのがいいと思うんだけど…あー、俺のことちゃんと見ててくれる人いるんだって思ったら会いたくなっちゃった」

そう話す隼人の姿を見ていると、学校に来たいんだろうなと感じた。
マネージャーさんが私と学校に通うことを条件に出したって話してくれたけど、隼人は普通の生活がしたかったんだと思う。
涼のことがあったときも思ったけど、私たちはやっぱり一般的な子たちとは少し違う。普通って何かと聞かれたらわからないし、該当する人数が多いってだけかもしれない。
けど、普通に憧れてしまう。

「心愛?」

「あ、そうだ。香水の話は知ってたの?ちょっとは隼人に有利になるかもしれない情報じゃん。」

「んー、知ってたよ。けどさ、…」

「けど、何?」

「その話を拡散したところで、この噂は長引くだけだし、相手の炎上にもつながるだろ?」

は?
と口から出そうになるのを我慢した。
隼人は相手のせいで炎上して傷ついてるのに、どうして相手の炎上を気にするのよ?普通もっと怒って、やり返したいって思うでしょ。

「今、は?って思っただろ。」

「なんでわかるのよ。」

「何年一緒にいると思ってんだよ。」

何年一緒にいても相手をかばう隼人の気持ちわからないんですけど。
なんて、ちょっと卑屈になる。

「ただのカッコつけに思うだろうけどさ、炎上してあることないこと言われるのって結構辛いんだよ。こんなことした理由はわかんないけど、たぶんあっちも今大変だろ。」

「まあ…、自業自得でしょ。」

「俺の何かが気に食わなくて、こんなことになったなら俺と相手の間で解決すればいいんだよ。世間を巻き込む必要はない。」

「…隼人がそう思えるなら、それでいいと思うよ。けど、絶対に無理はしないで。」

「おう」と言って、また笑う隼人。
隼人は超が付くほどのお人よしだし、良いヤツなの。
誰もそんな隼人を傷つけないで欲しい。邪魔をしないで欲しい。
それでいいと思う。と伝えておきながらも、ちっともそう思えてない自分がいる。
相手をぼこぼこにしてやりたいとさえ思う自分がいる。
こんな醜い気持ち隼人には、絶対知られたくない。

それから、少ししてマネージャーさんの迎えが到着した。
私のことも施設まで送ってくれると言ってくれたが、どこで誰が見てるかわからないし、変な噂のネタにされたら隼人の立場が余計に悪くなると思い気持ちだけ受け取った。

「心愛、気を付けて帰れよ。」

「大丈夫だよ、きっとすぐていらと合流するし。」

「ていらがいたら安心か。…またな。」

「うん。またね。」

やっぱり寂しいなあ、なんて思ったりした。