日常(仮)


「あそこじゃない?」

隼人の撮影場所はなんとなくで知っていた。
撮影がある日も、隼人は伝えてくれるから今日はあるはず。
そう思いながらあかりと探していると割とすぐに遭遇できた。

たくさんの機材や人がせわしなく動いている。
初めて見る知らない世界。

「隼人くん、どこだろうね」

遠くの方から見てたから、なかなか見つけられない。

「もう少し近づいてみよう」

あかりが私の手をつかんで前に進む。

「あ、あかり!」

「人たくさんいるから、近くに行ってもわかんないと思うよ」

他にも周りから撮影の様子を見てる人達はいて、その人達にまざって隼人を探した。

「…いた!」

少し小太りの男性と話している隼人を見つけた。
撮影のための衣装を着ている。いつもと違う制服。
髪の毛も隼人がいつも自分でセットしているものとは違くて、いつもの隼人じゃないみたいだ。
真剣な表情で話している隼人は、やっぱり誰よりもカッコよく見える。

「こうしてみると、隼人くんてやっぱり有名人なんだね。普段、見かける隼人くんと違ったオーラを感じる(笑)」

「私も仕事してる隼人初めてみたけど、かっこいいね。」

自然と口角が上がる。
自分でもにやけてるのが、わかった。

「ニヤニヤしながらのろけてる」

「えへへ」

隼人、頑張ってるんだなあ。
夜遅くまでセリフ覚えてたり、鏡の前で練習している隼人を私は知っている。
普段、施設にいるときは仕事の話は全然しない。
けど、みんなの知らないところで頑張ってる隼人を見てきた。
本人は知られたくないのかもと思って触れてこなかったけど、

隼人の努力が実りますように。

そう心の中で祈った。



「結衣ちゃん、今日も可愛かったよ」
「いやあ、良かった!」
「ありがとうございます」


聞こえてきた男性らの声と可愛らしい女の子の声。
声が聞こえてきた方には、スタッフらしき男性と

「結衣ちゃんだよ!!心愛!!」

あまりテレビやネットを見ない私でも知っている。
神崎結衣ちゃん。
私たちと同じ高校生で、女優もしている人気モデルだ。
ファッション雑誌の表紙でよく見かける女の子。

「めっちゃ可愛いね」

女の私から見ても、自分が男だったら彼女にしたいと思う。

けど、なんだろ…

「あの子、可愛いって言われるの好きじゃないのかな?」

なんとなくだけど、そう感じた。

「言われ慣れてるんだよ、きっと。どこに行っても可愛いって言われてそう」

「そっかあ」