日常(仮)


「今は、帰れないんだ。」

「なんでだよ!なんで、帰っちゃダメなんだよ!!」

私にも正解がわからない。
けど、涼君には涼君の現実を受け入れる必要がある。

「涼君とお母さんは、今一緒にいるべきじゃないの。」

「わかんないよ!」

「どうして涼君がお母さんと一緒にいられないのか、私にもわからないの。ごめんね。けど、どんなに泣いても叫んでも、ここで生活するしかないの。」

泣きながら下を向く涼君。
涼君の頬に手を当てて、上を向かせる。

「涼君はどうしたかった?」

「お母さんに会いたかった。俺が、お母さんを守りたかった。」

大粒の涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃだ。

「なら、泣いてないで強くならないと。ちゃんとご飯食べて、寝て、遊んで、強くなって涼君がしたかったことが出来るようになろう。ね?」

「…うん…。」

自分で言ってて胸が苦しくなった。
涼君が近い未来、お母さんと会えるかなんて全然わかんないのに。
涼君をそっと抱きしめた。
大きな声で泣く小さな男の子。
こんなに小さな彼がいろんなものを背負って行って、残酷な現実を受け止めようと必死に向き合おうとしてる。

どうして神様は意地悪なのだろうか。
どうして平等にしてくれなかったのだろうか。
学校に行く途中、涼君くらいの小学生とよくすれ違う。どの子も、ニコニコ楽しそうに友達と学校に向かってる。「いってきます」の大きな声と、子供の後ろ姿を見守る母親らしき姿も。
きっと、毎朝の当たり前で日常で。小さな幸せ。
どうして、その小さな幸せすら彼に、ここにいる子供たちに与えてくれなかったんだろう。

考えても、私にはわからない。
答えがわかったらスッキリするのかなあ。