日常(仮)


考えても、考えても、よくわからない。
わからないし、涼君に「お母さん元気だってよ」って言って、もしも「会える?」って聞かれたら、私は会えないって伝えなきゃいけない。
それが、とても心苦しい。

私は教室に戻らないで、あの部屋にいた。そう、物置部屋。
高校生になった今でも、この部屋にはよく来ている。

「こころ、何考えてるのぉー」

座って下をむいていた私の顔を、ていらが覗き込む。

「わかんないんだもん。なんで会っちゃいけないの?」

「んー、なんでだろうね」

ていらが困った表情をみせる。
この施設には、いろんな事情を抱えた子供たちがたくさんいる。
家が貧しくて一緒には暮らせない子、両親を事故で亡くした子、虐待を受けていた子、様々だ。

私には、最初から両親なんていなかったから…正直、みんなの気持ちがわからない部分もたくさんあった。
けど、いつだって羨ましい気持ちがどこかにあった。
私も両親にあってみたい。どうして私を捨てたの?何か理由があったの?それとも、ただ邪魔だったの?
両親を恨むことも愛おしく思うことも、私にはできなかった。

施設の子たちのことを気にするふりをして、結局いつも自分の背景を考えてしまう。

「新しい子が来るたび考えてるけど、いいんじゃない?そんなに考えないで。
今がそうなら、そうなんだもん。」

「なんか逃げてるみたいじゃない、?」

「逃げてもいいじゃん。こころ、今楽しいでしょ?誰も私たちに酷いことしないし、隼人がいて、あかりがいて、安心して過ごせる環境がある。涼君とお母さんが離れなきゃいけないことにも理由があるんだよ、きっと。」

「ん、」

「ここの人たちは、意味もなく引き離したりしないよ。」

ね?って顔して笑う。
ていらの言葉は昔から私に勇気をくれる。

「よし…。」

立ち上がって物置部屋からでる。
約束しちゃったんだから、伝えないといけないよね。
首突っ込んだなら、最後まで首突っ込まないと。

涼君がいる教室に戻ってきた。
扉を開けると、私が戻ってくるのを待ちわびていたような表情を見せる涼君と目があった。

私のところに駆け寄ってくる。
「お母さんは!?」

「涼君のお母さん、涼君と住んでたお家にいるってよ。」

「俺、帰りたい!!」

しゃがんで、涼君に目線を合わせる。