嫌いなあいつの婚約者!?

「おはよう、桜」

「……おはよう。って、もう婚約者じゃないんだから、来なくていいのよ」

 当たり前のようにコーヒーを飲んでいる涼。

「そうだね、でも、もう習慣になってしまって、どうも朝はここに来ないとダメなんだ」

「そうなの……」

 それってどうなの? と思いながら朝食のスープを飲む。

 朝にぴったりのあっさりしたコンソメ風味のスープがまだ目覚めていない体に優しく染みていく。

 一口飲んで、ふうっと一息つく。

「ねえ、桜」

「ん?」

「桜は本当に、奏多さんの恋人になってしまうの?」

 眉毛と目尻を下げて、まるで捨てられた子犬のような表情をしてこちらを見てきた。

 そんな表情をされたら、なんて言えばいいのか分からない。

 強気に言えなくなっちゃうじゃない。

「それは……涼には関係ないでしょ?」

「まあ、そう言われればそうだけど……。でも、違うと言えば違う。だって僕は君が好きなんだから」

「それじゃあ、なんで昨日彼女といたの?」

 言葉にした途端、後悔が襲ってくる。

 こんなんじゃ、私が嫉妬してるみたいじゃない。涼が他の女の人と歩くのが嫌で、それで我慢できなくなっているみたいじゃない。

 そんなんじゃないのに。

「生徒会の用事だよ」

「生徒会……」

「彼女は、涼が好きなのよ。私なんかより、きっと涼を大切にしてくれる」

「そう、かな……」

 私にとっては嫌な奴だけど、きっと涼に対しては誠実で自分の気持ちに正直に生きているだけ。

 彼女を見ていると、羨むほどに一途な気持ちを持っている。

 それだけは、彼女を尊敬する。

 だから、そんなにも彼女はあなたのことが好きなのだから……。