嫌いなあいつの婚約者!?

 授業を終えてほっと一息ついている時、目の前に鈴華さんの姿が現れる。

「ちょっと桜さん」

 手首を無理矢理掴まされて屋上に連れて来られた。

 今日は曇りで、白いもくもくとした雲が気持ちよさそうに浮いている。

 それに、鳥なんかも気持ちよさそうに鳴いていて、夏の日の気分の良い昼下がりを感じるとこができた。

 そういえばこの世界は夏と言ってもそこまで暑くならないし、湿度もないから過ごしやすい。

 美味しそうな形をしている雲から、目の前の人に視線を移す。

「それで……なんでしょう?」

「私の言いたいこと分かるくせに、白々しいのね」

 そんな嫌味を言うならはっきりと言いたいことを言ったほうが早そうだけど。

「婚約のことかしら?」

「ええ、そうよ」

 なんとなく予想はついていたものの、流石情報を仕入れるのが早い事には感心してしまう。

 でもどうせ、今の涼はあなたの好きな涼じゃないし、あなたの好きな涼は帰って来るかどうかも分からない。

「解消したって本当なの?」

「そうだけど、あなたにとっては好都合でしょ?」

「それはそうだけど……いいの? それで」

「いいの? って。私は奏多さんが好きだし、いいのよこれで」

 何か間違っていることがあるかしら? ううん、これが正しい。

「あ、そう。…………あなたが涼さまのことを本当に好きそうだったから今まではほとんど何もしなかったけれど、そういうことならもう私も遠慮することないわね」

「ええ、どうぞ」

「っ、後から後悔したって知らないんだからねっ」

 どすんどすんと効果音がつきそうな歩き方をして、彼女は私を屋上に1人残して行ってしまった。