嫌いなあいつの婚約者!?

「私、コンビニよって帰るから、涼先行って」

「でも」

「大丈夫。こっちの世界はそんなに危険じゃないし」

「……うん、分かった」

 本当は買いたいものも用事も何もない。ただ、涼の隣を歩くということが今の自分にとっては心がぎゅっとなることで、これ以上一緒に居られる気がしなかった。

 ぷらぷらと、暗くなっていく空を眺めながら遠回りをして家に向かう。

 奏多さんに会いたい、ぎゅっと抱きしめて欲しい。そしたら、この寂しさも無くなる気がする。

 なんでこっちの世界には奏多さんがいないんだろう。癒しの存在がいないんだろう。

 それより、どうしてこんなにも涼の言葉が心に重くのしかかってくるんだろう。

 どうでもいいのに、涼が誰を好きだろうがなぜその人が好きなのか、そんなの私には1ミリだって関係ないはずなのに。

「戻りたいな……」

 もともとの自分の世界はこっちなのに、あっちの世界の居心地がいいもんだからそんなことを思ってしまうんだ。

 お嬢様感の強い杏里にも慣れてきたところだった。

 杏里が私のために作ってくれたあの苺のお菓子、また食べたい。

 甘酸っぱくて、心がキュンとするあのお菓子。

 涼は戻ってこなくてもいいから、私だけでもあっちに行きたい。

「私はこっちの世界の方が好きよ」

「え?」

 自分の声が、どこからか聞こえてくる。

「いっそのこと、永遠に入れ替わってしまう?」

 辺りを見渡しても誰もいない。

「私はそれでもいい」

「じゃあ、そうしましょう」

 その瞬間、光に包まれる。と思ったら、どんどんと意識が遠退いていった。