嫌いなあいつの婚約者!?

 朝食を食べて身支度をしていると、涼が来る。

 いってきます、と言って家を出てとりあえずあてもなくふらふらと歩く。

「どこ行こうかな……。涼は、どんなものが見たい?」

 とりあえず最寄りの駅まで来たけれど、特に行き先も決まっていない。

 それにしても、色んなものにいちいち驚く涼が面白すぎて、声を出して笑ってしまった。

「桜?」

「ううん、なんでもない」

「とりあえず……あっちの世界にないものが見たいな」

「分かった」

 あっちの世界にはなくて、ここから気軽に行くことが出来る場所……。小さなお店で、必要なものがすぐに買うことが出来て、気軽に入ることのできる場所がすぐそこにあるじゃない。

「こっち来て」

「うん…………ここは?」

「コンビニっていうの」

 コンビニのことを説明するなんて、多分人生で初めて。

「すごい、いろんなものが売ってる。ここでなんでも揃うじゃないか」

「そうだよ、コンビニは便利だからね」

 涼は、様々な商品を興味深く見ている。包装から何から、あっちの世界とは全然違うものね。

 あっちの世界はほとんどのものが透明の袋に入れられている。

「こ、これは?」

 涼が脚を止めたのは駄菓子が売っているコーナーだった。

 いつも最高級のデザートを食べている人間にとったらこれは足元にも及ばないかもしれない。

 たった数週間あの場所で過ごした私ですら、舌があの一流の料理に慣れてしまったのだから。

 でも、駄菓子って美味しいと思わせる何かがあると思うの。

 気持ちの問題かもしれないけれど。

「これは、駄菓子っていうの。スイーツ……かしらね。食べる?」

「うん、食べてみたい」

 まあこれくらいなら、と1番いいリアクションの取れそうなものを1つ選んだ。

 涼は、他にもカップラーメンや健康食品などを見て「へえ」と言いながらまじまじとそれらを観察している。

 その姿を見ると、自然と笑顔が出てくる。

 よかった、自分だけがこの世界に戻って来るんじゃなくて涼も一緒にこの世界に来て。

 って、違う違う。

「そろそろ、出ようか」

「うん、そうだね」

「じゃあ、先外で待ってて」

「うん」