嫌いなあいつの婚約者!?

「もしかして、来ちゃったの?」

 きっと涼は今混乱しているはず。だって、いきなりこんな近未来のような世界に来たんだもの。

「よく分からないんだ。朝起きたら知らない部屋にいて。とりあえず桜の家の場所を聞いて来た。母も顔は同じだけどなんだか雰囲気が違うし、だいたいこの世界自体見たことない。見たことのないものもたくさんある」

「涼。とりあえずね、本当は私はこの世界の人間なの。何故かある日涼のいる世界に行ってしまったんだけれど。で、こっちの世界に涼がいて、多分その涼は向こうの世界に今いるんじゃないかな。とりあえず……なるべく私と一緒にいるのがいいわ。あなたのこっちの家族には当たり障りなく接して」

「なるほど…………。だから桜、人が変わったように感じたんだね」

 やっぱり、言葉にはしなくても感じていたのね。

「ええ、まあ」

「ねえ桜。せっかくだしこっちの世界の案内、してもらえるかな?」

「ま、まあ、いいけど」

 始めは不安そうな表情を浮かべていた涼だけど、今は好奇心の溢れる子どものような顔をしていた。

 あの世界には電車もなければ飛行機もない、スマホだって。きっと見たら驚くんだろうな。

「涼は朝ごはん食べたの?」

「いや、まだだよ」

「そう。とりあえず家に帰ってご飯食べたらまた来て。そうしたらお出かけしよう」

「うん、使用人もいないし大変だけど、とりあえず頑張るよ」

 確かに、幼いころからあんなに不自由ない生活をしていたら、庶民的な暮らしは慣れないことだらけだと思う。

 とりあえず、帰ることができるその日まではなんとかしたいけれど……。

「じゃあ、またね」

「じゃあ、また」