嫌いなあいつの婚約者!?

「んっ…………あれ?」

 朝目が覚めると、数週間前までの懐かしい光景が見えてきた。

「戻ってきた……?」

 ふかふかのベッドではなくて、少し硬めの庶民的なベッドにどこか安心感を覚える。

 だけど、戻ってきたことは嬉しいはずなのに、心からそれを喜ぶことができていない自分がいる。

 この世界には奏多さんもいないし、それに、涼もいない。

 ううん、いるのだけれど、涼自体はいるのだけれど……。

「今って……夏休みだ」

 棚にある大量の夏休みの宿題に目がいく。

 向こうの世界では夏休みは2週間の短いものでこれからだったけれど、こっちの世界ではすでに突入している。

「はあ、朝ごはん食べよ……」

 部屋から出ようとした時、お母さんがやって来た。

「桜、涼くんが来てるんだけど」

「え? 今?」

 時計を見てみると7時半をさしており、そういえば目覚ましが鳴らなかったなあと思いつつ、リビングに直行した。

「あ、桜……」

 この雰囲気、話し方、この涼はあの涼じゃない。すぐに分かる。

「ちょ、ちょっといいかな。私の部屋来て」

「あ、うん」

「桜、朝ごはんは?」

「あとでっ」

 涼の腕を掴んで、再び部屋に戻る。