嫌いなあいつの婚約者!?

「んんっ」

 結局、朝から何も食べずに1日中ベッドの中で眠っていた。

 窓の外を見るとまだ空は明るく、今が何時なのかと思い時計を見ると15時30分になろうとしているところだった。

「桜」

「……涼」

 メイドと一緒に涼が現れた。

「大丈夫?」

「う、うん……」

「苺、食べられる? 少しでも何か食べられるものがあれば食べた方が良いと思うんだ。朝から何も食べていないっていうじゃないか」

「そうね、苺、食べたいわ」

 涼がメイドを見ると、彼女は一礼をして部屋から出て行った。

 体を起こそうとすると「いいよ、無理しなくて」と、涼が隣に来る。

 そして、涼の大きな手が頭に優しく触れる。

「心配したよ。桜が体調崩すなんて今までに無かったから」

 この前の告白のこともあって、涼と目を合わせられない。

 こんな姿を見られるのも恥ずかしくて、顔を布団で覆い隠してしまいたい。

「奏多さんじゃなくてごめん」

「そんなこと」

「苺、持ってまいりました」

 絶妙なタイミングでメイドが戻ってきて、会話が中断される。

「ありがとう」

 そんなこと、ない?

 私はなんて言おうとしたの?

 せっかくお見舞いに来てくれた涼のことを気遣ってなのか、それともこれが本心なのか、考えれば考えるほどまた溝にはまっていきそうになる。

 考えない。

 また知恵熱を出してしまうもの。

「自分で苺食べられる?」

「ええ、大丈夫」

「僕の、せいかな?」

 涼は私の顔を見ずに、斜め下を向いて眉毛を下げて申し訳なさそうに言う。

 そうだよ、涼のせいだよ。

 言いたいのに、そんな表情を見てしまったら言えなくなってしまうじゃない。

「いろいろ、あって、疲れたの」

「そっか」

 涼はまだ私の顔を見ないで、壁に飾られてある時計の針を眺めているようだった。