嫌いなあいつの婚約者!?

「桜さま。お持ちしました」

 メイドは、甘い香りと共に戻ってきた。

「ええ、ありがとう」

「シナモン風味のホットチョコレートです」

 チョコレートの甘い匂いが、絡まった感情を少しだけ解してくれて、喉に通すとその優しい甘さに心が安らぐ。

「美味しいわ」

「あと、苺のチョコレート掛けを」

「苺……」

 好きな果物のはずなのに、今はそれを見るのが辛い。

「嫌でしたか?」

「いえ、そんなことないわ」

 テーブルの上に置いた輝く苺が、せっかく休まった私の心をまた乱す。

 涼ごときに、こんなに悩まされる自分がすごく嫌で、いっそのこと婚約解消を本当にしてしまおうかと思い始めてきた。

 きっと、繋がりがあるからいけないのよ。なんの関係性も無くなれば、涼のことを考える時間だって減るはず。