嫌いなあいつの婚約者!?

「はあ」

 今日の出来事を思い返すと、溜息しか出てこない。ああ、こんなんじゃあ幸せが息とともに逃げてしまう。

「どうしたんですか?」

 結局あの後は、涼を残して1人で帰ってきた。

 今、手元には涼から貰ったあの苺のネックレスがあって、それをじいっと見つめている。

「いろいろと、あるのよ」

「何か悩みがあるのでしたら、お話聞きますよ。話したくないのであれば、もちろんそれでいいですけど」

 機械的に話すメイドに苦笑いをしつつも、気遣ってくれるその態度に少しだけ心が安らぐ。

「ありがとう。とりあえず、何かほっとできるものが欲しいわ」

「ええ、かしこまりました。お持ちしますね」

「よろしく頼むわ」

 もし、涼と婚約を解消すれば私は晴れて自由の身になることができる。

 でも、それでいいの?

「って、なんでそんなこと思うのよ」

 いいじゃない。だって、私が好きなのは奏多さんで、涼のことなんてこれっぽちも好きじゃない。

 どころか、嫌いだったんだから。

 嫌い……だった? 過去形?

 自分の中で、確実に涼に対する感情が変わり始めてきているのを感じる。

 冬から春になる。雪が解けて花が咲く。コートやマフラーで寒さを凌ぐ服装からから、花柄のひらひらとしたワンピースに変わる。