嫌いなあいつの婚約者!?

「奏多さんっ」

 お茶会当日、涼と共に杏里家へと足を運ぶと、すでに奏多さんの姿があった。長身ということもあって、立ち姿も薔薇のように華やかでかつ美しい。

「私もいるけど」

 視界に無理矢理入ってきたのは言うまでもなく鈴華さんで、せっかくの高揚していた気分も一気に下がる。確かに彼女にも目立つオーラがあるけれど……。

「ご機嫌よう」

「ご機嫌よう。あからさまにがっかりしないでちょうだい」

 私の機嫌がこうなることを分かっているなら、初めから来なければいいのに。

「2人とも、こっちよ」

 ちょうど良いタイミングで杏里の呼び声が聞こえてくる。

 テーブルの上に飾られたスコーンやジャム、ケーキ、サンドウィッチ、そして紅茶と、せっかくの御馳走と素晴らしい友人と好きな人ががいるのだから、嫌なものに目を向けていたらきっと損。

 2人が話している姿なんて、視界に入れなければいい。

「桜。これ、苺のスコーンなのだけれど、どうかしら? 桜のために用意したの」

「わざわざありがとう。…………うんっ、すごく美味しい」

「よかったわ」

「桜さんは、苺が好きなの?」

「はいっ。甘くて、ほんのり酸っぱくて、食べると心がキュンとするんです」

「まるで恋のようね」

「ふふっ、そうですね」

 ああ、杏里と奏多さんといるとなんて心が穏やかでいられるのだろう。私にとって2人は、それこそ苺のような存在だ。甘くて、少し酸っぱくて、心を満たしてくれる。

「そうだ、今年もそろそろ桜の誕生パーティーがあるわね」

「ええ、たしかに」

 誕生日はこっちの世界でも同じ日みたい。

「プレゼント、考えなくちゃ」

「ありがとう」

「今年は僕も参加していいかな?」

「はいっ、もちろんです」