嫌いなあいつの婚約者!?

夜、なかなか寝付けずに外の空気に当りに来た。

 空には星が輝いていてその中に月もあって、月は海にも浮いていた。

 砂浜に来てそのままなにも敷かずに砂の上に座る。

 寂しく、海が音を立てているように聞こえる。ざあざあっと、夜の空気に音が同化していく。

「はあっ」

「どうしたの? ため息なんかついて」

 砂を踏む音と声が聞こえてくる。

「涼」

「寝られない?」

「ちょっと、…………ね」

 思えば、涼にだって好きな人がいるんだから私と同じ立場であることには変わらない。

 それならなぜ、好きな人と結婚できるように少しでも努力をしないのだろうか。

 好きな人と一緒にいたいというのは、本能でしょう?

「ねえ」

 話そうと立った時、砂とサンダルで不安定な足元のせいでバランスを崩し転びそうになる。

「桜っ」

 転ぶと思っていた体は倒れず、涼の腕の中にいた。

 数秒の間、暖かい体温、心臓の鼓動、呼吸が直に伝わってくる。

「あ、ありがとう」

 涼から体を離す。

「いえいえ」

 今が夜で良かったと心の底から思うのは、絶対に顔が赤くなっているから。

 涼は、どんな顔をしているの? 私みたいに少しは緊張してる?

 涼に触れた感覚がまだ残っていて、そのせいで感情が混沌としていて、紛らわすために私は砂浜を走り始める。