嫌いなあいつの婚約者!?

 部屋から出て杏里のところに行こうとした時、反対側から近付いてくる人が確認できて、その人の顔を見ると思わず頬が緩んでしまう。

 その人は私に気付くと、にこりと笑みを浮かべた。

 それだけで私の心は満たされる。

「桜さんも杏里に用事?」

「あ、はい。一緒に、館内の散歩でもどうかなって」

「そうなんだ。僕もちょうど、杏里の所に行こうとしていたところで。よかったら、僕もご一緒していいかな? 案内もできるし」

「は、はい、もちろんです」

 なんという幸運だろう。

 2人で杏里に話をして、早速施設内を見て回ることになった。


 

「2人は初めてだもんね」

 広々とした廊下を、3人並んで歩く。それでもまだ余裕のある廊下は、相当幅が広い。

「ここの階はレストランエリア。和洋中好きなのをいつでも食べられるんだ。どこも美味しいけど、僕のおすすめは和食かな」

「いいですね、和食」

「うん、心がほっとする味だよね」
 
 なんて素敵な表現をするのだろうと、うっとりとしてしまう。