嫌いなあいつの婚約者!?

 涼くんは、何も言わないでひたすら廊下を歩く。

 後ろ姿、記憶がないのにすごく懐かしい気持ちになる。

「わっ」

 よそ見をしながら歩いていたから、涼くんが止まったとことに気が付かなくて大きな背中にぶつかってしまった。

「ごめんっ」

「あ、ううん。大丈夫。それより、何の用?」

「これ……」

「それは……?」

 渡された苺のネックレス。

「あれ……」

 頭がずきんずきんと痛くなって、立てなくなる。それと同時に、記憶が押し寄せてくる。

 ああ、そうだ、これは涼が私にくれたやつで、それを鈴華さんが涼に返しておくって……。

 全部、戻った。奏多さんのことも涼のことも。

「桜っ、大丈夫?」

「涼……」

「もしかして、記憶」

「うん」

「……そっか。よかったね」

 記憶が戻って私は嬉しい。でも、涼はその反対の表情を見せる。

 なんで? 嬉しくないの?