嫌いなあいつの婚約者!?

「おはよう、桜ちゃん」

「お、おはよう」

 あんな会話を耳にしてしまった今、聖くんと話すのもなんだか気まずくて目を合わせられない。

 せっかく仲良くなれたのに。

 教室の扉のほうを眺めていると、涼くんが登校してくる姿が目に入ってきた。

 目が合う。だけどすぐに反らした。

 今度は窓から見える空を見る。今日は快晴で、澄み渡る青空がどこまでも続いている。

 こんなに天気のいい日なのに、心の中は雨雲で埋め尽くされる。

「桜さん」

 いつの間に鈴華さんがいえ、ぼーっとしていて目の前に来ていたことに気が付かなかった。

「これ、返すわ」

「ハンカチ……」

 それは、私が涼くんにプレゼントしたあの青色のハンカチで、なんでそれを鈴華さんが持っているの?

「迷惑なのよ、こういうの」

「これは、その……」

「そういう言い方ないんじゃない?」

「は? 誰よあなた」

 聖くんが立ち上がって鈴華さんの横に並んだ。

 教室を見渡すと、涼くんの姿はない。

「桜ちゃんの友人だよ」

「…………なに、あなた。奏多さんの次はこの人? あなた、本当にふらふらしてるのね」

「僕たちはそんなんじゃない」

 聖くんがはっきりと否定してくれてことに、心がほっとした。

「まあ、好きにすれば? とにかく、涼には近づかないで」

 ハンカチを机に叩きつけると、「ふんっ」と言って教室から出て行った。

 もう、本当に朝から嫌なことばかりで……。

「ありがとう、聖くん」

 青色のハンカチを、鞄にしまう。やっぱり、プレゼントなんてすべきじゃなかった。

「ううん、当然だよ。桜ちゃんは大切な友達だからね」

「ありがとう」

 その暖かい気持ちに、涙が出そうになった。