嫌いなあいつの婚約者!?

 自分の教室に戻って来た。

 手に持ったステンドグラスクッキー。せっかく作ったのだから、食べてしまおう。

 初めから、自分のために作ったと思えばいいの。

「桜、おはよう」

「杏里…………これ、昨日作ったんだけど、食べる?」

「あら、美味しそう。ぜひ頂くわ。どうせなら、ランチの後に紅茶と召し上がらない?」

「そうね」

「……どうしたの?」

「私…………やっぱり、奏多さんのことを好きな気持ちが思い出せないの。だから、もう関わるのを止めようかと思って。きっと、奏多さんにもその方がいいと思う。記憶のない私なんかを思っているのなんて、きっと時間の無駄」

「じゃあ、涼くんは?」

「え?」

「涼くんに対しても何も思わない? 何の感情もない?」

「それは…………」

 奏多さんには抱かなかった、涼くんに対する想い。気になって気になって、一緒にいる時は楽しくて、でも鈴華さんの存在にもやもやして……。

 記憶が無くなってもなお、気になる存在。

 でも……。

「ごめんなさい、余計なこと言って」

「ううん」

 記憶が戻ればきっと、何もかも解決するのに。どうして私は、2人のことだけを忘れてしまったの?