嫌いなあいつの婚約者!?

 少しの間、他愛もない話をして時を過ごす。

 涼くんと過ごす時間とはまた違った時の流れで、涼くんが洋食なら奏多さんは和食みたいな感じ。

 空もオレンジ色になりかけてきたところで、そろそろ帰ろうかと誰からともなく言った。

 構内にはもう生徒の姿はほとんどなくて、しいんとしている。鳥の鳴き声が、その静寂の中に響き渡る。

「じゃあ、桜さん、杏里。また」

「ええ、また」

「チョコレート、ありがとうございました。また、お会いしましょうね」

「ぜひ」

 奏多さんに一礼をして、杏里には手を振ってさよならをして、待っている車に乗り込んだ。









 帰宅して少し休憩した後、私は早速メイドに頼みごとをした。

「ねえ。お菓子作りをしたいんだけど」

「お菓子ですか?」

「そう」

 決めたの。涼くんとは出来る限り関わらない。奏多さんのことを大切にする。記憶がなくてもあっても、奏多さんが私の大事な人であることには変わらない。

「そうですね……、いいですよ。お手伝いいたします」

「ありがとう」