嫌いなあいつの婚約者!?

 放課後、杏里と共に2年生のエリアに来た。周りが上級生だらけで緊張する。注がれる視線を気にしないようにしながら、奏多さんのクラスへと向かった。

「ここよ」

「うん」

 私の代わりに杏里が教室のドアのところから中を覗いてくれて、それに気付いた彼が教室から出て来た。

 奏多さんの顔を見ると、改めて思う。

 涼くんももちろんかっこいんだけど、奏多さんはかっこいいを通り越してもはや美しくて、まるで彫刻のような顔をしている。しかも、背も高い。

 こんな人が自分の恋人だと思うと、嘘なんじゃないかと疑ってしまう。私なんかのことを、こんなに完璧な人が好きになってくれるはずがないと……。

「桜さん、元気? どこか具合の悪いところはない?」

「大丈夫です」

「よかった。桜さんが元気なら、僕はそれだけで十分だよ」

 奏多さんは、本当に安心をしたのか頬を緩めた。

「でも……」

 恋人という自分の存在のことを忘れてしまっている私のことを本当はどう思っているのか、聞きたくても聞けるはずがない。

 私なら絶望しかない。きっと、その状況に逃げてしまう。現実から目を背けて、別の恋を求めると思う。

「少し、構内を散歩しようか?」

「私はどうしたらいいかしら?」

「杏里も一緒に」

 2人きりになるのはまだ怖いという思いがあって、だけど杏里と一緒ならまだ大丈夫な気がする。こんなこと、本当は思いたくないのに。もっと、心を許したいのに。

「そうだね」

 気のせいかな。奏多さんの表情に少しだけ哀愁を感じ取ることが出来るのは。

 多分、それは気のせいなんかじゃなくて、そうさせているのは確実に私。