嫌いなあいつの婚約者!?

 メイドがお金を払いに行っている間に涼くんと2人になる。涼くんはハンカチを真剣な眼差しで見つめている。

 店内にはクラシックな音楽が流れていて、涼くんを見ていると、ただの日常のワンシーンなのに、まるで映画の一コマを見ているかのようだった。

 なんていうか、目を惹くの。顔の造形とかもそうだけど、雰囲気っていうか、他の人にはない特別なオーラが。

「ハンカチ、好きなの?」

「うん、色々な柄が合って飽きないし、色々と役に立つからね」

「確かに、ハンカチって便利よね」

 深い青色のまるで深い海を思わせる模様のハンカチが目に入った。絶対、涼くんに似合う。

 私が倒れたときも走って心配して来てくれたし、何かお礼くらいしたい。

 これくらい、恋人じゃなくてもプレゼントしたって、いいわよね?

「ねえ、これも欲しいわ」

 戻ってきたメイドにそのハンカチを渡すと、耳元で「プレゼント用ですか?」と聞かれ、静かに頭を縦に振った。

 メイドはにっこりと笑って「かしこまりました」と言うと、また再び会計しに行く。

「桜」

「なあに?」

 ハンカチコーナーから既に離れていた涼くんは、何かを見つけたのか私に向かって手を振っている。

「見て、苺の柄のティカップがあるよ」

「わあ、本当だ。可愛い。苺…………苺」

 苺の柄を見ていると、頭の中の押し込まれた記憶の一部を思い出しそうな感覚を覚える。

 苺の何か……。なんだろう、思い出せそうなのに、思い出せない。分からないけど、すごく大切なもののような気がする。