嫌いなあいつの婚約者!?

「んっ」

「桜さん、ごめんあんなところ歩かせたから」

「あんなところ……」

 顔の奇麗な人が私の顔を見て安心した表情を見せる。この人は誰だろう。あんなところって、私は一体どこを歩いていたのだろう。

 あ、そうだ。

 海に行って岩場を歩いてどこかへ行こうとしていたんだ。そしたら足元が滑って……。

「桜、大丈夫?」

「杏里……」

 杏里がいるっていうことは、この人は杏里の知り合いか何かかしら?

「ごめん、杏里。こちらの方は?」

「え……。桜、分からないの?」

「うん」

「桜っ」

 と、もう1人血相を変えた同い年くらいの男子が走ってきた。この人はこの人で、整った顔をしていて王子さま、みたいな雰囲気を醸し出している。

 でも、この人も誰なのかが分からない。私の名前を呼んでいるし、呼び捨てだし、親しい人?

「杏里。ごめん、2人のことが分からないの」

「そう、なの?」

「ひとまず、確認しますので皆さま部屋を一旦出て行ってもらえますか?」

 ここの世界に来て3度目に会う医者は、こちらの顔をじっと見つめている。私、どうかしちゃったのかしら……?