嫌いなあいつの婚約者!?

 残される涼と私。

 どうして、こんな私の為に……。涼だって上級生の人に目を付けられたら面倒になることくらい分かっているはずなのに。

「大丈夫?」

「なんで……?」

「ごめん、桜が心配で。どうしても心配で。……あんまり2人でいると奏多さんに見られるかもしれないし、僕は先に行くよ。桜も、授業に遅れないようにね」

 涼はそれだけを言うと居なくなる。

 本当に、ただ私のことが心配で助けに来てくれただけ。なにも見返りなど求めずに……。

 どうして、涼はそれで平気なの……? 好きな人が自分に振り返ってくれる可能性がとても低いのに、どうして……。

 そんな涼の気持ちを考えると、胸が締め付けられる。自分のことじゃないのに、大きな涙が地面にぽつぽつと落ちていき、地面を黒く染めていく。

 それはどんどんと大きくなっていく。

 私がこの世界に来てしまったから、涼は幸せな日々から遠のいてしまった。

 きっとそれまでは名ばかりの婚約者ではなく、想い合っている2人で、なのに私が桜と入れ替わってしまったから歯車が狂ってしまったんだ。

 私のせいだ……。私がいなければ、涼ともう1人の桜はきっと無事に結婚でもしていたはず。

 でも、本当に今流れている涙はそれのせい? 

 本当は違うんじゃない? と、心の中でもう1人の自分が問う。

「だって、もう、遅いもの……。これ以上、誰かを犠牲になんてしたくないの……」

 誰に聞かせるわけでもなく、ただ心の声が出た。