嫌いなあいつの婚約者!?

「離してください、彼女、痛がっているでしょう」

 急に私の前に現れて、まるでスーパーヒーローのように守ってくれる、見える大きな背中がとっても力強く感じる。

「りょ、涼……?」

 顔は見えないけれど、聞き間違えるはずがない。その声は、涼だった。

 十何年も聞いてきた声。こんな状況で、助けに来るのが涼なんてずるい。

「なによ、やっぱり元婚約者とも繋がってるんじゃないっ」

「違います。それは誤解だ。僕が、…………僕が彼女を忘れられないだけで。今だって、桜が連れて行かれるから心配になって来てみただけです」

 他の人が言ったらストーカーみたいなことも、何故だか涼だとそうは感じない。

「それなら、あなただって私の気持ちわかるでしょう? 好きな人に恋人がいて、自分のことを全然見てくれないこの辛さ」

「ええ、分かります」

 涼ははっきりと言った。

「でも…………これは間違ってる。自分の好きな人が選んだ人を傷付けるのは間違ってる」

「なによっ、いい子ぶって」

「それでいいんです。好きな人が笑っているならそれでいい。少なくとも僕は」

「なによ……好きにすればいいじゃない」

 それ以上何も言えなくなったのか、涼に鋭い視線を浴びさせてその人は走ってここから立ち去った。