嫌いなあいつの婚約者!?

 焦っている涼を見るのは多分これが初めてで、いつも逆の立場だったからなんだか新鮮な気持ち。

 優位に立った、とかそんなんではないけれど、涼が少しだけ可愛く見える。
 
 あんなに憎たらしい奴だったのに。

 というか、もう彼は私の知っている涼と見た目以外全てが違うのだから、同じ人間とは言えないのかも。だから、錯覚を起こしてしまうんだ。
 そう考えると、少し寂しいような逆に気分が晴れるような、どっちつかずの感情が生まれる。

「あ、これ」

「ありがとう」

 苺のジュースを、ようやく受け取った。

 爽やかな甘さと酸味のハーモニーされた香りがぷーんと漂ってきて、その匂いだけで満足してしまいそうになる。

「んん、いい香り…………美味しいっ」

 ストローを通して口の中に入ってくると、嗅覚で味わう何倍もの苺の濃厚な味が楽しめる。

「ははっ、大袈裟だなあ」

「だって、本当に美味しいの。甘くてほんのり酸っぱくて」

「じゃあ、今度は僕も苺にしよう」

 涼の手にはオレンジ色をしたジュースがあって、お店の看板を見ると、その見た目の通りのオレンジ味のものだった。

 それはそれで美味しそうに見える。

 オレンジの味を想像するだけで、あの柑橘類のジューシーさがが口の中に広まるようだ。

「今度の校外学習の時、ジュースもあるといいね。まあ、自分で作るのもありだけど」

「校外学習?」

「先生の話、ちゃんと聞いてた? 再来週の校外学習。全生徒で島を貸し切って行われるものだよ。普段交流できない学年とも交流できるから、いい経験になる」

「そ、そうだった、すっかり忘れてたよ」

 ん? 他の学年ということは、奏多さんとももちろん交流できるってことで、これは大きなチャンスかもしれない。