嫌いなあいつの婚約者!?

「もしかして、杏里が好きなの?」

「そ、そんなんじゃ」

 わっかりやすいくらいの動揺を見せる涼に、笑いが抑えられなくて「ふふふっ」と息が漏れてしまう。

 顔もそこの野菜店にある艶々の赤林檎のように染まっていて、これはもう『恋』という言葉で表すほかない。

「別に、隠すことないのに」

「僕は君の婚約者だぞ」

 その言葉で、ちくりと心に小さな針が刺さるような感覚がした。

 君、と言われたことがで一気に距離を感じる。

 それは私にまたありもしない感情を起こして、混乱させる。

 別に、涼になんと呼ばれようがいいじゃない。

 関係ない。

 頭で分かっているのに、理性よりも感情が優ってどうも心に雲がかかる。もやもやと、白ではないグレーの雲が心を覆っていく。

 でも、確かにこの世界の涼と杏里は同じ空気感の中にいて、お似合いだと思う。

 こんな私より、杏里の方がきっといい。

「協力するよ」

「と、とにかく、今まで通り過ごそう。桜は僕の婚約者。僕は桜の婚約者。その事実は変わらない。いいかい?」

「はあい」