嫌いなあいつの婚約者!?

 バレないように、窓の外を見たりしながら涼の跡を追っていく。

 って、私何をしているの。

 もしかしたら、鈴華さんのところに行くんじゃないかと思うと、どうしても気になってしまっていても立ってもいられなくなる。

 だからってこんなストーカーみたいなこと……。

 涼は廊下を曲がった。急いで私もその後を追う。

「どうしたの? 桜」

 そこには壁に寄りかかっている涼がいて、なんだか雰囲気がいつもと違って男らしさが増していた。その姿が新鮮で、嫌に緊張する。

「りょ、涼」

「桜から突き放したのに、今度は僕を追ってくるなんて。どうしたの?」

「そ、そんなんじゃ。ひゃっ」

 涼の手が頬に触れる。

 真っ直ぐな瞳に吸い込まれそうになる。

 顔が近い。もう少し近づけば鼻と鼻がくっついてしまいそう。

 もうだめ、こんなんじゃあおかしくなってしまう。

 その時、人が近づいてくる音がして涼はさっと離れた。

 息が吸えない。

 心臓が早く動きすぎて苦しい。
 
「って。奏多さんを好きな桜が僕のことを追ってくるわけないか。ごめん、変なこと言って」

 いつもの雰囲気に戻った涼。

「そ、それは……」

「じゃあ、僕行かないと」

 どこに? 私を置いて行かないで。

 声にならない言葉が、脳内に次々と湧き出てくる。ここで涼の手を握れば、世界はどう変わるの? どんな道が待っている?

 小さくなっていく涼の背中。こちらを振り向かない涼の姿。

「ま、待って」

「桜?」

「その……」
 
 どうしよう、何を話せばいいのか全く分からない。