嫌いなあいつの婚約者!?

「あれ、桜?」

「杏里、偶然だね。…………その方は?」

 杏里の隣にいるのは、まさに私の理想を詰め込んだ見た目をした男の人だった。

「いとこよ。同じ学校に通ってるけれど、確かに、学年が違うから会わないわよね」

「はじめまして。奏多です」

「は、はじめまして。杏里の友人の桜です」

 声までもが、やや高めで甘めの理想的なもの。

 さっきまで涼のことが気になる自分がいたことが、急にバカバカしく感じてしまう。

「桜の婚約者の涼です、よろしく」

 こ、婚約者なんてそんなこと、なんで言っちゃうの。

「で、でもまだ正式じゃない……と思うの」

「なあに、どうしたの桜。そんなこと言うなんて」

「えっと、あの……」

「桜、行こうか」

 涼は私の手を掴むと、一礼をしてその場を去る。さっき歩いていたよりも大分スピードを上げて歩く涼に、脚が絡まりそうになる。

「ちょっ、ちょっと待って」

 私の言葉を聞いて、ぴたっと動作を止めた。

「あ、……ごめん」

 どこか動揺したその姿に、私はもしかしたらと1つの考えが思い浮かんだ。