二十歳未遂か、と真っ白なシャツに黒のパンツ、でも綺麗な靴、ぼさぼさの黒い頭が鳥の巣みたいだって思ったのに、十九歳を咎められなかった。

 いー表現だね、って許容してくれた。



 無条件で自分を受け入れてくれる人間がいること。これは割と生きてる中で必要不可欠なのにそうそう巡り合えない唯一無二だよね。




「どこいくの」

「わかんない」

「書き置き残したってことは、見つけられたかったってこと?」

「誰かに見つけられたいもんなんだよ、人間は誰だって」




 そか、と帰ってくる。

 たとえば仕事の日の朝、どうしても無意味に決まった駅で降りるのが嫌になって、この先の全然知らない場所に向かってそこで降りちゃうの。

 誰だってそんなことしたくなるんだよ。人生だってボイコットしていいよ。誰のためでもない。誰のためにもならない。自分の行いは、自分のためにある。自分を自分として認めてあげるのに、必要な措置だってある。




 自分を守るために逃げること。それも一つの勇気だ。