春の始まりに、もう一度君に会いに行く。

二人で教室に入ると、既に登校していた人たちから注目が集まった。


恥ずかしくなった私は、うつむいたまま自分の席へ直行して席に着いた。



顔を上げずに座っていると、前の席に座っていた女の子に話しかけられた。




「ねえ、名前なんていうの？」


顔を上げると、お人形みたいに色が白くて、目がくりくりの女の子が私を見ていた。


「優芽です…、佐々木優芽」


「優芽ちゃんね、私は佐久間あすかだよ！よろしくね」


「こちらこそよろしくね、あすかちゃん」



見れば見るほど、本当にこんなかわいい子見たことがないっていうくらいとても容姿が整っている。


女子の私でも見とれてしまう。



「ねえ、優芽ちゃんとあの人って付き合ってるの？」


そう言って、あすかちゃんは隣の席の人、つまり私の斜め前の席の田川君を指さした。


「いや、違う違う。たまたま電車が同じ車両で流れで一緒に来ただけ…」


私なんかとの噂が流れてしまったら田川君に申し訳ないから、全力で否定をした。




「そうなの？てっきり付き合ってるのかと思ったよ、なんかお似合いだし」



私と田川君がお似合い…


いや、そんなわけは絶対ない。

うん。





「優芽ちゃんって、東中出身だったりする？」


「うん、そうだよ」



何で知っているんだろうと不思議に思っていると、あすかちゃんは「やっぱりね」と呟いた。



「優芽ちゃんの友達に佐久間愛莉っているでしょ？あの子は私のいとこなの」




愛莉は私の親友だ。

確かに名字も一緒だし、雰囲気も似てる。


だから、話しやすいのかと納得した。


「愛莉に頼まれたの。もし、高校で佐々木優芽ちゃんって子に会ったら守ってあげてって。一人でも大丈夫っていつも言っているけど、本当はとても繊細な子だからって」


「そう…なんだ」


愛莉…。


そんなに私のことを心配してくれていたんだ。








「そうだ！優芽ちゃんとも友達になれたし、今度愛莉も誘って三人で遊ぼうよ」


「行きたい！」




あすかちゃんの笑顔はどことなく愛莉に似ていて、安心できるから、心を開けるかもしれない。





愛莉のおかげで、高校でも一人ぼっちで過ごすことはなさそうかな…。