すれ違った警察官が悠真を見て馬鹿にしたように言う。悠真は「俺だってここに来たくて来たわけじゃない!」と怒鳴りたかったがグッとその気持ちを堪える。どれだけ喚いても、ここに悠真の味方はいないのだ。

「ここがこれからの睦月さんの働く部署になります」

「……ありがとう」

案内をしてくれた警察官に悠真は作り笑いをしてその部署を見つめる。警視庁で問題を起こしたことがある人物が集まってできた部署のせいか、ただならぬ気配が扉越しにでも伝わってくる。

悠真は深呼吸をして、扉をノックした。すぐに中から「はい、どうぞ!」と緊張したような女性の声が聞こえてくる。

この扉を開けてしまえば、もう自分の過去のエリートと呼ばれた道はなくなる。そう思うと悔しくて、家で散々泣いたのに悠真はまた泣きたくなった。

「今日から新しく入ってくれる人でしょ?早く入りなよ」

中からそんな声が聞こえ、悠真は慌てて姿勢を正した。そしてゆっくりと扉を開ける。