この警視庁には、あそこに配属されれば警察人生が終わりだと囁かれている部署がある。それは警視庁から存在を隠されるかのように、警視庁の奥に作られた小さな部署だ。その名も、資料整理課。

その部署には、問題を起こしてしまった人間が集まっている。しかし、彼らは実はどんな刑事よりもとてもすごい存在なのだ。

その真実を知っているのは、そこの部署の人間と警察のトップだけである。



巡査部長の睦月悠真(むつきゆうま)は、つい数週間前までアメリカのFBI捜査官だった。

独学で覚えた心理学を駆使し、数多くの難事件を解決に導いてきた優秀なFBI捜査官は、今警視庁の廊下を重い足取りで歩いている。その顔や足取りは久々の日本を楽しむものではない。

「あっ!睦月だ」

「あいつ、FBIをクビになって日本の資料整理課に飛ばされたらしいぞ」

「ええ〜……。何やらかしたんだ?」

「さぁな。でも、優秀だった元FBI捜査官って死ぬまで言われ続けるのか〜。かわいそうだよな」