「良かったじゃないか、レイティス。」
現実逃避をする私とそれに付き合うリリアとの会話に突然奴が入り込んできた。そう、こいつが、初対面で私の髪をお化けみたいだとぬかし、風属性を持つ男。憎き私の宿敵、ベルティア ライアント。金糸のような髪を後ろで一つに編み、深い緑の目をしたこいつは、悔しいが私からみても美形だ。それも、美形の中でもかなり上位に位置している美形だ。
そして、こいつは公爵家の次男でもあり、顔やら爵位やらに目が眩んだ女の子たちに日々言い寄られている。そして今も、こいつに話しかけられた私とリリアを遠くで妬ましそうに見るクラスメイトの女の子たちが見える。私だって好き好んでこいつに話しかけられているわけではないんだから、そんな目でこっちを見ないで欲しい。
お前のせいだとでも言うように、私は奴を睨み付ける。
「何か用があるならさっさと言ってどっかに消えてくれない?公爵様。」
「卒業課題、攻撃魔法だったね。君が使えない攻撃魔法。これで君はもう一度六学年だ、おめでとう、レイティス。」
「ちょっ…ライアント!この子を煽るようなこと…」
本当に、こいつは腹が立つ。
何がおめでとうだ。留年して私が喜ぶとでも思ってるのかこの阿保は。
「あんたこそ良かったじゃない、課題があんたの大得意な攻撃魔法で。さっさと合格して卒業して、二度と私の前に現れるな!」
「ちょっと、シャリーも落ち着いて…」
本当にこいつを見てると腹が立って、リリアの制止を聞き入れず、ついつい口が悪くなってしまう。
こいつは私と同じくらい魔力が高い。にもかかわらず、道具もなしに自分の力だけで魔力の制御ができている。だから私はこいつが気に入らない。私ができないことを当たり前のようにやってのけるから。嫌味しか言えないこの男に負けているなんて私のプライドが許さない。
「否定しないんだ。その言い方だと、留年するって言ってるみたいだけど。」
「黙って。そんな嫌味ばっかり言うなら、私がクラーレで働き始めてもあんたのことは治してあげないから!」
「そう、別にいいけど。でも仕事に私情をはさむようじゃすぐクラーレもクビになるかもね」
最も過ぎる返答に何も言えなくなった。それがまた悔しくて顔を歪ませると、どうしたの、不細工だよ。と真顔で言ってくる。
こいつは卒業後、騎士団に入ることが決まっているらしい。他の女の子たちが話しているのを聞いただけだけど。
入隊したらお父さんにこいつのことをこてんぱんにしてもらおう。そうしよう。
「ライアント!女の子にそんな事言わないの。あなた公爵家のご子息でしょう?」
「大丈夫、こんなことレイティスにしか言わないから。」
「…そう?それならまあ…」
「ちょっと、リリア」
何で私だけならいいのさ。
私だってこれでも年頃の乙女なわけで。いくら私のさっきの顔がそれはそれは不細工だったとしても、実際にそれを指摘されるのはちょっと傷つく。こいつは私を一人の女どころか、人として見ていないんだろうか。いや、こいつに女として見られてたとしたら、それはそれで気持ち悪いが。
「まあ、留年が嫌なら攻撃魔法頑張るしかないんじゃないの?先生に掛け合ったところで君だけ特別扱いなんてしないだろうからね。」
意地の悪いニヤニヤとした笑みを浮かべて去っていくライアント。
うざい、うざい、うざい、うざい!
掛け合ったところで特別扱いはされない…?そんな事私だって最初っからわかってるわ!リリアだって、私の気を紛らわす為に言ってくれただけだし!
もうこうなったら、攻撃魔法で頑張るしかない。今の私は魔力封じの指輪を着けている。そのおかげで私は本来の魔力の半分くらいの魔力しか使えない状態になっている。前、家に指輪を置いていったときは、指輪がなかったから攻撃魔法が暴走して周りに多大な迷惑をかけた。それからは指輪を着けていても怖くて攻撃魔法は使えなかった。でも、今は留年か卒業かの瀬戸際だ。もし留年なんぞしてしまったら、そんな奴クラーレには必要ないと、一生雇って貰えないかもしれない。そんなのは嫌だ。
大丈夫、シャルマリー。あなたはやればできる子よ。だってあなたは、あのギルバルト レイティスの娘だもの。
そう自分に言い聞かせると、なんだか少し勇気が湧いてきた。
現実逃避をする私とそれに付き合うリリアとの会話に突然奴が入り込んできた。そう、こいつが、初対面で私の髪をお化けみたいだとぬかし、風属性を持つ男。憎き私の宿敵、ベルティア ライアント。金糸のような髪を後ろで一つに編み、深い緑の目をしたこいつは、悔しいが私からみても美形だ。それも、美形の中でもかなり上位に位置している美形だ。
そして、こいつは公爵家の次男でもあり、顔やら爵位やらに目が眩んだ女の子たちに日々言い寄られている。そして今も、こいつに話しかけられた私とリリアを遠くで妬ましそうに見るクラスメイトの女の子たちが見える。私だって好き好んでこいつに話しかけられているわけではないんだから、そんな目でこっちを見ないで欲しい。
お前のせいだとでも言うように、私は奴を睨み付ける。
「何か用があるならさっさと言ってどっかに消えてくれない?公爵様。」
「卒業課題、攻撃魔法だったね。君が使えない攻撃魔法。これで君はもう一度六学年だ、おめでとう、レイティス。」
「ちょっ…ライアント!この子を煽るようなこと…」
本当に、こいつは腹が立つ。
何がおめでとうだ。留年して私が喜ぶとでも思ってるのかこの阿保は。
「あんたこそ良かったじゃない、課題があんたの大得意な攻撃魔法で。さっさと合格して卒業して、二度と私の前に現れるな!」
「ちょっと、シャリーも落ち着いて…」
本当にこいつを見てると腹が立って、リリアの制止を聞き入れず、ついつい口が悪くなってしまう。
こいつは私と同じくらい魔力が高い。にもかかわらず、道具もなしに自分の力だけで魔力の制御ができている。だから私はこいつが気に入らない。私ができないことを当たり前のようにやってのけるから。嫌味しか言えないこの男に負けているなんて私のプライドが許さない。
「否定しないんだ。その言い方だと、留年するって言ってるみたいだけど。」
「黙って。そんな嫌味ばっかり言うなら、私がクラーレで働き始めてもあんたのことは治してあげないから!」
「そう、別にいいけど。でも仕事に私情をはさむようじゃすぐクラーレもクビになるかもね」
最も過ぎる返答に何も言えなくなった。それがまた悔しくて顔を歪ませると、どうしたの、不細工だよ。と真顔で言ってくる。
こいつは卒業後、騎士団に入ることが決まっているらしい。他の女の子たちが話しているのを聞いただけだけど。
入隊したらお父さんにこいつのことをこてんぱんにしてもらおう。そうしよう。
「ライアント!女の子にそんな事言わないの。あなた公爵家のご子息でしょう?」
「大丈夫、こんなことレイティスにしか言わないから。」
「…そう?それならまあ…」
「ちょっと、リリア」
何で私だけならいいのさ。
私だってこれでも年頃の乙女なわけで。いくら私のさっきの顔がそれはそれは不細工だったとしても、実際にそれを指摘されるのはちょっと傷つく。こいつは私を一人の女どころか、人として見ていないんだろうか。いや、こいつに女として見られてたとしたら、それはそれで気持ち悪いが。
「まあ、留年が嫌なら攻撃魔法頑張るしかないんじゃないの?先生に掛け合ったところで君だけ特別扱いなんてしないだろうからね。」
意地の悪いニヤニヤとした笑みを浮かべて去っていくライアント。
うざい、うざい、うざい、うざい!
掛け合ったところで特別扱いはされない…?そんな事私だって最初っからわかってるわ!リリアだって、私の気を紛らわす為に言ってくれただけだし!
もうこうなったら、攻撃魔法で頑張るしかない。今の私は魔力封じの指輪を着けている。そのおかげで私は本来の魔力の半分くらいの魔力しか使えない状態になっている。前、家に指輪を置いていったときは、指輪がなかったから攻撃魔法が暴走して周りに多大な迷惑をかけた。それからは指輪を着けていても怖くて攻撃魔法は使えなかった。でも、今は留年か卒業かの瀬戸際だ。もし留年なんぞしてしまったら、そんな奴クラーレには必要ないと、一生雇って貰えないかもしれない。そんなのは嫌だ。
大丈夫、シャルマリー。あなたはやればできる子よ。だってあなたは、あのギルバルト レイティスの娘だもの。
そう自分に言い聞かせると、なんだか少し勇気が湧いてきた。

