「おはよー、シャリー!」
「あ、リリア。もう来てたんだ、おはよ」

彼女はリリアーヌ ベルク。ウェーブのかかった背中まである長いオレンジの髪と赤い瞳が魅力的な美人さん。そして何より、出るとこ出ているスタイルのよさ。それがリリアの魅力に磨きをかけている。なんと羨ましい。
自分の体を見下ろしてもそんなに出ていない胸。リリアと並んでいると自分のささやかな胸が目立ち何とも言えない気持ちになる。

「ねえ、今日だよね。卒業課題が発表されるの。あたしはやっぱり強化魔法がいいなー・・・」
「私は攻撃魔法じゃなければなんでもいいかな。でも治癒魔法だったら嬉しいけど」
「そっか、シャリー治癒魔法得意だもんねー。シャリーの為に攻撃魔法にはならないことを祈っておくわ」

私たちが五年と数ヶ月通った魔法学校も、あと一ヶ月で卒業となる。それに合わせ、今日卒業課題が発表されるのだ。これに合格できなければ卒業できず、留年という不名誉な経歴が一生付きまとう。
そんな大事な課題が攻撃魔法になってたまるか。
私は攻撃魔法は使わないことにしている。いや、使えないと言った方が正しいかも知れない。それも恐らく魔力が高すぎ、自分の力だけでは制御できないことが関係しているんじゃないかと思う。
だから卒業課題が攻撃魔法だったら困る。卒業できなくなるから。


そして、この後私は地獄を見ることになる。








まずいまずいまずい。これは非常にまずい。
先ほど卒業課題が発表されたのだが・・・あろうことかその課題は私が使えない攻撃魔法だった。どうしよう、このままでは卒業できない。卒業後、私は念願の治癒師ギルド クラーレの本部で治癒師として働くことが決まっていたのに。
留年して、もう一回六学年をやり直す?そんなの
嫌すぎる。
「大丈夫?
一緒に先生に掛け合ってみようよ。元々シャリーは治癒魔法推薦で早く入学してるんだし、特別に卒業課題変えて貰えるかもしれない!それに、先生だってシャリーが攻撃できない理由は知ってるわけだし」
「うー…リリアぁぁぁぁぁー…大好きぃぃぃ」

リリアに勢いよく抱きつくと、よろけながらもしっかり受け止めてくれて、よしよしと頭を撫でられる。
リリアが言った通り、私は小さい頃から強力な治癒魔法が使えたため、特別に通常よりも二年早い10歳の時に魔法学校に入学したため同級生たちよりも二歳ほど年下ということになる。現在私は16歳、リリアたちは18歳。こんな感じで。
中でも一学年の頃から仲良くしていたリリアはまるで姉のような存在だ。

「にしても、シャリーの髪って本当綺麗よね。こういう色ってベビーブルー?って言うんだっけ?」
「こんな色良いことないよ。目立つし。奴からはお化けみたいって言われたし。
知らない人からもジロジロ見られるから私は好きじゃない。」
「そう?綺麗なのに。私も青系統の髪が良かったー。
やっぱり髪の色も魔力属性に影響されるのかしら。炎のあたしがオレンジだし。」

頭を撫でていたリリアは羨ましいといった感じで私の髪を人束すくう。
魔力には属性があり、それぞれの属性の魔力が血液のように体の中を循環している。属性の種類は『空、大地、水、風、氷、炎、雷』の七つに分けられる。浮遊や治癒や転移などの生活の上で使われる基本的な魔法は属性に関係なく使うことができるが、自分とは別の属性の魔法は使うことができない。例えば炎属性のリリアが雷属性の魔法を使うことはできないといった感じ。

私の魔力の属性は氷。そう言われると、私たちの髪や目の色は魔力属性に影響されているように感じる。そして奴も、魔法属性は風で金髪に深い緑の目だからなんとなく風っぽい色をしている。
でも魔力属性と関係ない色をしている人も多い。例えばお父さんなんかは魔力属性は水なのに、黒髪に黒い目だったりする。