その頃。

エミューの散歩をして洋子は、自宅に戻ろうと車の中に入ろうとした時。

ジリリリリリ。

火災です!火災です!

えっ!

何で?

火災発生のサイレン?

施設内からサイレンが鳴り響く。

施設には彼等が居るはず。

「何か引火したのかな?・・・大丈夫かしら?」

洋子は、エミューのリードを掴みながら車のドアを開けた。

「ねぇ!二人共、その動画を止めて!」

焦り声で言った。

「どうしたの?」

「大声で言わなくても聞こえる。」

声を大きく話しかけるので、ビックリしながら答えた雪也と彩芽。

「この音!これ、間違いなく鳴っているわよね?」

二人に聞こえるか?そう問いかけた。

「うん。」

雪也が返事をした。

その後続けて。

「やかましいねぇ。」

彩芽も耳を抑え言った。

「雪也、彩芽ちゃんと車で待っていられる?」

洋子は、雪也に4人の安否が気になると話した。

「何か胸騒ぎがする。火災って、あるはずない事でしょ?施設にエミューと行ってみるわ。」

ワンワンワン!

クイィーン!

「お前も気になるのか?」

ワフ。

雪也はipodを座席において降りた。

施設に何が起きているんだろう?

二人の子供も、施設からの煙が本物である事を確認した。

二人の両親に電話を掛ける洋子。

室内は火災が発生している為届かない音。

洋子は、二回ずつ二人の両親に電話を掛ける。

しかし無音。

「でない。」

洋子は、ますます不安が募る。

雪也も、自分の携帯を取り出す。

掛けてみるが、本当に電話が繋がらない。

音が耳元でなっている。

「ママたち出ないの?」

彩芽は携帯を持ってないので、雪也の表情見て出ない事を不思議がる。

バコーン!

バンバンバン!

ドカーン!

そんな!

施設が爆発した。

ウォンウォンウォン!

エミューが激しく吠えたてる。

すると。

施設から、危険です!離れてください!避難してください!

その放送が流れてくる。

「えっ!施設が・・・ばっ・・・爆発したわ。4人は?」

洋子は、その音に驚く。

「ねぇ、パパ達がいる所が!」

「危険です!って言っている。叔母さん!父さん達、返事しないのは事故があったかもしれない。」

洋子は、もしかして研究中に事故でもあったのか?

その文字が脳裏に浮かんだ。

ワォーン!

エミューは大きな雄叫びを上げる。

クゥォ―ン!

クォーン!

ワンワン!

ガウガウガウ!

エミューは、施設に顔を振り向かせ。

異常の程叫び暴れ始める。

「おい!こら!エミュー!」

ガウガウ!

グゥーワォーン!

ブンブン尻尾が激しく振る。

これほど暴れるのおかしい。

本当に何かあったに違いない!

雪也は洋子に。

「ねぇ、エミューのこれ、異常だよね?今から警察と消防に電話する。」

「そうね。」

すると、エミューが一瞬のスキを突き、施設の方へ走って行ってしまう。

あっ!

「エミュー!」

「待って!」

「エミュー!戻れ!」

3人は、エミューに向かって叫びながら、こっちに戻れと合図をした。

しかし、燃え上がる施設の中へ入って行ってしまう。

「大変!」

「エミューが・・・行っちゃったよぅ。」

泣き出す彩芽。

わぁぁぁぁぁん。

「彩芽泣くな。」

頭をなでなでする雪也。

「15分!そんなぁ!わかりました。」

警察と消防は、15分もかかるらしい。

その間は燃えているってこと。

洋子は、大きく息を吐く。

そしてエミューを呼び戻してくると言う。

「エミューを呼び戻すまで、絶対に警察の方々の言う事を聞いて。」

そう言って。

洋子は、命も危ないのも解っているが、エミューを探しに施設に入って行った。

「彩芽。なぁ、こっち。顔見て。いいか、よく聞け。ここでエミューと叔母さんを待つからな。」

雪也は、泣いている彩芽を、自分の方に向かせ眼を見て話をする。

ひっく・・・ひっく・・・。

「・・・エミュー。雪也兄ちゃん、絶対に叔母さんと帰ってくるよね?」

小さい眼差しの中の不安が、雪也はどう答えていいか悩んでしまう。

目の前の事に対して、

「・・・んー。・・・そう・・・なるといい。必ず。父さん達も見つけて、エミューも帰ってくるといい。」

そういうしかなかった。

警察が来るまでの間。

雪也は凄く。

鏡のように瞳に写っている火柱が、さっきより高くなってるの見て怖い感覚が出てきた。

本当にこの中に居るのか?

両親は、何故、彩芽の両親さえも連絡がないのか?

そこが気になる。

雪也は、携帯の時計を見た。

もう20時半だ。

まもなく警察とか消防とか来てくれる。

それまでに洋子叔母さんもエミューも帰ってきてほしい。

内心。

泣き始めた彩芽のように、小学生の雪也も泣きそうなのだ。

彩芽は小さいので、泣き止まなくても自分は年上。

男の子として守ろうとするのが当たり前だと我慢していた。

施設の内部。

エミュー!

炎が近づいていても、ここを早く脱出したいので、あちこちと呼んでみる。

一体どこにいるの?

そう思いながらも、必死にエミューを探している洋子。

4人を探すにはエミューが必要だから・・・。

ワンワン!

「んっ?この声!」

やっとエミューの声を耳にした。

その後、自分はここに居るのに、吠えているし、痛みを感じてる声までもする。

一体・・・何が起きている?

もっと走る。

先へ急ぐ。

はっ!

エミューが、誰かに向かって噛みついたりしている。

そこには二人の人間が居た。

戸ノ上と鈴原だった。

危険物取扱室へ向かう廊下で襲っていたのだ。

ガウガウ。

ウワォーン!

キャイーン!

ガウゥ・・・ワン!

「エミュー!」

駆け寄る洋子。

「やめろ!こら!あっちいけ!」

「噛むな!おい!」

戸ノ上は左大腿部を、鈴原は右手首を負傷していた。

血が床に流れている。

エミューは、何故この人達を襲ったんだろう。

やっと引き離した。

「あの、戸ノ上部長に鈴原主任。」

洋子はきっと、火事で今から逃げるであろうと二人に問いかけた。

「何だ。この犬は。ハァ・・・痛いな・・・ハァ・・・。躾がなってないな。賞を取るはずの犬なのにな・・・。」

「飼い主に似て・・・んっく・・・。言う事を・・・聞かないんではないでしょう・・・か?今頃、あそこで・・・。」

それを聞いて。

飼い主に似て?

今頃あそこで?

不思議に思い。

「・・・どういう事ですか?」

戸ノ上が言いました。

「もう・・・生きていないだろう。ハハハハ。馬鹿な4人だ。俺の言う事を聞かずに、この桐の箱を奪おうとしたからだ。」

「溶けているか、燃えているのでは?ハハハハハ。」

鈴原も後に続き、洋子に残酷な話を次々話した。

「酷い!じゃ・・・じゃ・・・。そんな・・・惨い。」

エミューGO!

洋子は4人の居場所まで走った。

そこは物凄い炎。

ワオーン。

クィーン。

反応がない。

洋子は叫んだ。

応答をしてほしい。

ねぇ、誰か生きていないの?

室内。

たった一人、か細い息をゆっくりしている。

もう時間がない。

その人物が、最後の力を振り絞り。

燃えさかる炎の中で携帯を取り出す。

エミューさえも入れないほど燃えている。

トゥルルルルル。

けっ・・・携帯?

誰?

その文字は・・・。

4人のうち、彩芽の父親がかけてきた。

「直樹!聞こえるわ。直樹!大丈夫?ねぇ!」

心配している声は大きい。

「・・・よう・・・こ・・・。こど・・・も・・・達。げっ・・・元気か?」

もう息をするのも辛くて聞き取りにくい。

それでも必死に聴く耳を立て聞いた。

「大丈夫よ。・・・ねぇ、他の・・・3人は?」

「三人は・・・もう・・・。わるい・・・・いっ・・・いが・・・・。・・・こっ・・・子供・・・達を・・・。エミュー・・・も・・・た・・・の・・・む・・・。あと・・・。」

ゆっくり・・・携帯を床に置く直樹。

息は喘鳴化し、最後の最後に戸ノ上達が何をしたのか?

それを話してる途中。

一気に煙が口から入り、顎が上がり飲み込んだ後亡くなった。

洋子は、直樹の最後の言葉を胸にしまう。

「直樹・・・俊也・・・由美子・・・綾乃・・・。必ず・・・。リっ・・・立派に育てるわ。ごめんなさい。もう・・・行くね。さようなら。」

洋子とエミューは、炎を必死に避けつつ何とか施設から脱出を試みた。