「〜♪」

保育士として働く向井(むかい)ひなたはハミングをしながらキッチンに立つ。これから昼食を作るためだ。作るのはそうめん。

鍋に水を入れて火にかけていると、ひなたの体にズシリと重みがかかる。体調が悪いわけではない。ひなたはクスリと笑う。

「マクシム、重いよ」

「アハハ。ごめん、ごめん」

ひなたが振り向くと、紫の目に百八十は越えているであろう大柄な男性がニコリと笑う。ひなたの恋人であるロシア人のマクシム・アルロフスカヤだ。

「何か、寂しくなっちゃって」

「もう、お昼作れないよ〜」

マクシムはひなたに抱きつき、離れない。ひなたは苦笑しながらもマクシムに抱き付かれながら調理を続ける。

マクシムには親がいない。そのためずっと孤児院で育ち、ひなたより年上だというのに寂しがり屋だ。

「ねえねえ!ご飯食べ終わったらさ、デートに行かない?行きたいところあるんだ」

ひなたを抱き締めたままマクシムが言う。ひなたは「急だね、どうしたの?」と苦笑する。