「ほら、着いたぞ。ここが家だ。」

私は思わずわあっと声をだす。
坂の上に建っていた、あまり派手すぎないレンガ造りの家で、私は一目で気に入った。

「お母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さん!」
「何よ、お母さんはそんなにたくさんいないわ。」

お母さんが笑って言った。

「そんなことよりも、お母さん!」
「だから何よ。」

私は目を輝かせた。

「ボルテーノの街、みてきていい?」
「うーん、そうねぇ…。」

お母さんはしばらく考えて、言った。

「遅くなる前に帰ってくるならいいわよ。」
「やったー!ありがとう!」
「気をつけてね。」
「はーい!」

勢いよく私は家を出た。

「本当に楽しみだったのね。」
「そうだな。やっと外に出れたんだ。それに……『生きてる人間を見れて』、嬉しいんだろうな。」

私は家の前にある坂を走って下っていった。