「ねえ、お母さん!あとどれくらいで街に着くの?」

森の中を一台の車が走っていた。

「もうすぐ見えると思うわ。落ち着きなさい。」
「なんて名前の街だっけ?」

私は助手席にいるお母さんに問いかける。

「もう、あんなに楽しみにしてたのに、街名は忘れるのね。」

お母さんは笑った。

「はーやーくぅー!教えてよ~!」
「ウフフッ。街名はね……」

私はその名前を聞いて窓の外を眺める。
ちょうど、その街が見えてきたのだ。

(私が、これから住む街…!)

多分今、自分の目は輝いているのだろう。

「…『ボルテーノ』…か。」

私は静かに呟いた。