「人を 好きになるって 難しいね…」

綾乃の言葉に 私は 驚いて 顔を上げた。

「どうしたの。急に?」


「私 年下の彼のこと かなり 気になっていたの。まぁ きっかけは 彼が 思わせぶりなことばかり 言うからなんだけど。でも 私 年上だし。上手くいかなかったら 嫌だから。半分 逃げ腰で。好きだってこと 認めなかったから。」

「うん。相手が どのくらい本気か わからないし。綾乃の不安は わかるよ。」

「でもさ。自分の気持ちが 大切なんだよね?今 渚に言われて ハッとした…」

「綾乃が 臆病になるのは 無理もないと思うけど。私だって 綾乃には 傷付いてほしくないし。でもさ。自分で 納得できるなら いいと思うよ。そんなに 慎重にならなくても。駄目になっても いいじゃん。また やり直せば。」

「もう やり直しは 嫌だけどね…」

「やり直しなんて いくつになっても できるんだよ。何回 失敗したって いいんだって。だから 正直になって いいんじゃない?」


「何か 渚 変わったね。ていうか 昔の渚に戻ったみたい。」

「昔?フフフ。中学生の頃とか?」

「うん。思い切りがよくて。大胆で。私 いつも 渚の 前向きさに 助けられてたじゃん。」


「まさかぁ。私は 綾乃の 慎重で 緻密な所に 助けられてたのに…」

「私 先読みし過ぎてた…計算通りになんか いかないんだよね。」

「私は 憶病になっていて。思い切りのよさが 売りだったのに…」


私と綾乃は ケラケラ笑って 見つめ合った。