「福原さんの奥さんって ナースなのね。夜勤もあるし。収入も良いから。福原さん 時間も お金も 自由になるけど。やっぱり 寂しいのかなって 思っていたの…」

「ナースなんだ…子供は どうしてるの?奥さんが 夜勤の時。まだ 小さいんだよね?」

「5才。奥さんが 夜勤の時は 実家に預けるんだって。奥さんの。だから 福原さん まるっきり 1人で 自由なわけ。」

「へぇ。じゃ 綾乃と 付き合い始めた頃って 2才とか だったんだ…」

「そう。可愛い盛りじゃない?2才って。でも 男の人が 1人で 面倒をみるのは ちょっと大変かなっていう年で。私 福原さん 可哀そうって 思ったの。奥さんの実家に 遠慮もあるだろうなって。でもさ 本気で子供のこと 可愛かったら 面倒みればいいじゃない?自分の子供なんだから。」

「まあね…本気で子供が 可愛かったら 最初から 不倫なんて しないから。たとえ 子供の面倒は 見れないとしても。それとこれは 別じゃない?」

「うん。私も やっと そう思えるようになった。私と 付き合い始めた時点で 親の責任を 放棄したことになるって。」

「結婚してない私に 夫婦のことは よくわからないけど。でもさ。子供として 自分の父親が 不倫してたら…嫌だよね。わからないから いいとかじゃなくて。そういう親の 子供だってことが 嫌じゃない?自分に そういう血が 流れていることとか…」


「そうだね…私 自分が不倫してても お父さんに 愛人がいたら 嫌だ。勝手だね…」


「私 大丈夫だと思うけど…綾乃の気持ちが 強ければ。もう 福原さんに 戻ることは ないような 気がするけど。綾乃って 芯が通っているから…」


「渚…そんなことないよ。私 すごく弱いよ…」

綾乃の目に 浮かんだ涙が 零れそうで。

私は 綾乃から 目を逸らした。


「でもさ。顔見るのが 辛かったら 転職しても いいんじゃない?田舎に帰るのは 極端だけど。国家資格があるんだから。どこでも 仕事できるよ。綾乃なら。」


綾乃を 守るために 先にボールを 

拾うことは もう できないけど。


ボールを 何度 落としても 大丈夫って 教えたい。

私達の 長い人生は 試合じゃないんだから…