担任教師の 引退を祝う クラス会は

8割近くの 生徒が 集まった。


開催を お正月休みに 合わせた 幹事のお手柄。

地元を 離れている人も 帰省できたし。

小さな子供がいる人も 家族に預けられたから。


地元で有名な ホテルの 小宴会場。

私は綾乃と一緒に そっと 扉を開ける。


「わぁ。渚?綾乃も一緒?懐かしい。」

入り口の脇で 受付をしていた 幹事のクラス委員。

「うん。久しぶり。」

「相変わらず 元気そうだね。」


田舎特有の 雰囲気が 馴染めなくて。

私達は ぎこちなく笑う。


「2人とも 垢抜けて 綺麗だね。やっぱり 私達とは 違う…」

「そんなことないって。水田さんこそ。もう 子供いるんだって?」

販売職の私は 調子良く 話しかける。


「うん。3才の やんちゃ盛り。毎日 大変よ~?」

「いいじゃない。幸せそうよ。」

「ううん。私 平凡だから。こうするしかないの。」


クラス委員だった 水田さんは 控え目な笑顔で 言った。


私は綾乃と 顔を見合わせて 苦笑する。


『私達だって 平凡だよね?』


言わなくても お互いの 心の声が 聞こえて。