百年が経つ。

アーク王国は人魚に守られていることで有名だ。

――その人魚の名はアイリス。


かの賢王、アレン・アークと人魚アイリスの伝説は世代を超えて語り継がれ、今日のアーク王国主催の祭りにもなっている。





祭りの喧騒も聞こえない静かな海辺の洞窟。

そこには何かを懐かしむように海を眺めている人魚の姿があった。

「アレン。知っているか?
今日はどうやら私たちのお祭りらしい。


――そろそろ私も、前を向いていかなくてはならないのだな」


一筋の涙が人形の頬を伝った。



彼女は、アイリスは今日も生き続ける。

人間がアレンを忘れようと、自分だけは彼を永遠に覚えていることができるのだから。