翌日からも、オレらは養成所でノウハウなどを学びながら、漫才のネタを書いて練習したり、コントしてみたり、色々とやってみた。

そして、なんとか1日終えて、オレは昨日のお礼を兼ねて、そのるさんに連絡してみる。

『昨日はありがとうございました。お礼にお食事か何かどうですか?たくさん話したいことあるんです』と。

そしたら返事はすぐに返ってきて

『良いよー!なら、俺のオススメの店、予約しといてやるよ』って。

嬉しくてオレはつい、ニヤけてしまった。

「渉~帰る?」とアイツが声をかけて来る。

「いや、今日は予定あるからお先~」そう言ってバイバイしたオレ。

ほんとはあんまり一緒にいたくない。

惨めになるもん。

オレはそそくさと逃げるようにしてその場を去った。

養成所の前で待っていてくれたそのるさんの車に乗り込み、オレらはレストランに向かった。

しばらくして、お店に着くと、

「予約の早川です」とそのるさんが言い、中に通された。

なんと、そこは経験したこと無い豪華な個室だった。

確かに稼いでるんだろうとは思ってたがこんなにすごいとこ、入ったこと無いオレはどうしていいかわからずただキョロキョロしていた。

「落ち着きな!大丈夫だ。とりあえず適当に注文するな?今日はアルコールは控えような?」と言われて頷くオレ。

料理を待つ間、芸人になろうと思ったきっかけなどを話した。

そのるさんも、マスター同様、聞き上手なことが判明した。

料理が運ばれてきて、食事する。

うっ、うますぎる!こんなの食べたこと無い!

そんな表情が顔に出てたのか、

「口に合うか?」と心配してくれてオレは何度も頷いた。

食べながらたくさん話した。色んなことを。

自分のやりたいこと、それ以外のことも。

たくさん語った。お笑いやそれ以外のことも!

ホントに何時間も。

そのるさんも色んな話をしてくれた。

売れてなかった頃の話や、ソロになった経緯、人生経験、ついでにはゲイであることまで。

それを聞いてオレは思わず聞いてしまった。

「やっぱりマスターとは付き合ってるんですか?」って。

ほんとは聞くつもりなんて無かったのに。

「…バレてたんかいな?そうやで~てか、気づいてたのによう、抵抗せんと俺と絡めたな~」って言われて

「そのるさんのプライベートな話とか聞けて嬉しかったですよ。この時代、同性婚とかもやっと少しずつは認められるような時代になった訳ですし、うちの消防署にも結構やってる人いましたしね!オレは正直抵抗無いんですよ。素直に、好きな人が好きな人と一緒になることは良いことだと思ってるので」とオレが言うと、

「やっぱり、オレ好きやわ~!お前のこと、うん。わかった、オレも協力出来ることはしたるさかい、頑張りな!」とそのるさんは言ってくれた。

美味しくて楽しい食事は無事終わり、オレはそのるさんに送ってもらって家に帰った。