大切な芸人(ヒト)~ヒーローと始める恋の奇跡~

「式はどこでしたい?」とオレは聞いた。

もちろん、海外の小さな式場でふたりであげるのも悪くないって思ってるけど。

「…みんなに笑って貰える結婚式にしたい。友達や会社の人も呼んで…誰にも真似出来ないくらい凄いものを!」と清羅さんは言う。

オレよりずっと壮大だった。

『芸人さんらしく』って…そんなん考えたことも無かったけど、

清羅さんとそれが出来るならと思うとスゴく楽しみになった。

早速オレらは計画を立て始めた。

オレは式にはアイツを呼びたいと考えてた。

オレ側のスピーチをお願いしたいと。

オレのワガママなんだけど、アイツの魔法で式を笑顔溢れるものにしてほしいと思ったんだ。

清羅さんが笑顔の式がしたいって言ったから。

オレは、清羅さんにそう話した。

「もちろんだよ!良いと思う」と清羅さんは快諾してくれた。

なので、オレは早速、

壮大な企画書をアイツの家に持ち込んだ。

自宅で仕事をしている在宅ワーカーのアイツの家に。

応接間だと言うリビング通され、コーヒーを入れてもらった。

かなりのデカさの部屋だった。

家賃高そうとか思ってついキョロキョロしちゃうオレ。

「…ここ、オレの持ち家だから」ってサラッとエグいこと言われた。

「えっ?このマンション一棟丸々?」と聞くと、

「そう!ここ意外と人気なんだよぉ~?結構入居者も多いんだから!」って。

そんな稼いでるのか?!

オレの何百倍もってこと?とオレは開いた口が塞がらなかった。

「まぁ、半分は芸人時代に貯めたお金よ?貯金してたんだ。芸人やってるときにビジョン組んでてさ」と言われて、

がむしゃらにまだもがいてる自分が恥ずかしく感じた。

『アイツ』はオレが思ってたよりずっとカッコいい生き方してるんだなって。

「で、用件は?」と言われて、慌てて我に返ったオレは『企画書』として結婚プランを書いたものを渡した。

中をパラパラ見ながら、「面白そうだね!良いよ。引き受けてあげる。その代わり、俺との契約金は高くつくよ?」と言われた。

もちろんその覚悟はしてきた。


「ここ、サインしてくれる?」と言われて、オレはサインした。

「後日、明細書と見積書送るから」と言われて、よろしくお願いします

とオレは頭を下げた。

数日後、届いた明細書兼見積書には金額は記入されていなかった。

オレは理由が気になって、アイツに電話した。

「何この請求書?白紙だけど?」とオレが言うと、

『よく見た?』と言われて内容を詳しく見直す。

そこには

『俺とデート』、『食事』、『漫才』、

『ネタ』、プライスレスと表記されていた。

オレの頭はさらに混乱。

『つまり、これはオレからお前への請求だよ』と言われた。

…お金を取らない代わりに、ここに記されていることをしてくれという請求と言う意味なのか?

オレはそう聞いてみる。

『ご名答!さすが渉だね』と返ってきた。

「わかった。近いうちまた連絡する」とオレは言って電話を切った。

そして、清羅さんに伝えた。このことを。