「なるほど〜……。未来に好きな人かぁ〜」

「だから違うってば!」

友達のからかうような声に未来は否定するものの、その顔は真っ赤に染まっていて説得力はない。

「そういえば、さっきさ美術の伊藤先生に会ったんだけど、未来の絵が上手になってるって褒めてたよ」

「へえ、伊藤先生褒めてくれたんだ……」

友達の言葉に未来は嬉しさを感じると共に、帆高から絵を教えてもらった時のことを思い出す。

『絵をうまく描くコツはね、まずは描きたいと思うものの形をしっかり見ること。それからリアルに描くために場所によって筆に強弱をつけるといいけん』

そう言われながら、ペンを持つ手を優しく握られたのだ。優しい手の温もりを思い出し、未来の冷めかけた体の熱はまた上がってしまう。

「何?好きな人のことでも思い出した?」

ニヤニヤしながら友達が言い、「違う!絶対違うから!」と未来は否定して時計を見る。時計は三時半を指していた。未来の顔に微笑みが浮かぶ。